いきなりOpenFOAM (14)

電子機器内部の流れ

電子機器のモデルと解析対象

 今回は電子機器内部の流れを解析し、あわせて通風抵抗を求めてみます。図1に解析対象の電子機器を示します。電子機器の開口部は通常、異物の侵入を防止するために格子やスリットになっていますが、これを解析モデルで再現すると、メッシュ数が増大し計算時間の増大を招きます。そこで、一般的には格子やスリットや細部の部品は省略し、圧損条件などを与えますが、今回は単純な開口部として計算をします。また、電子機器の熱流体解析では、電子部品の発熱や放熱も考慮しますが、熱の計算にはより多くのパラメータ設定が必要となるため、今回は熱の解析は行わず、流れの解析のみとします。

図1 電子機器形状
FreeCADによる解析モデル作成

 電子機器の流体解析に用いるモデルは、内部も含めた周囲空間がソリッドで、電子機器本体は空洞となります。そこで、電子機器と同じ大きさのソリッドから電子機器をブーリアン演算により切り抜きます。次に、できあがったソリッドモデルを図2に示すように、面要素に分解し、流入口、流出口、電子機器表面に相当する面をstlファイルで出力します。

図2 空間を面要素に分割
XSimでの条件設定

 次に、ブラウザを起動し、XSimのサイトに接続します。プロジェクト名を入力し、先ほどstlファイルをドラッグドロップで読込ませます。FreeCADでのモデリングは㎜単位で行っていたため、モデルをm単位にスケールダウンさせます(図3)。「次へ」をクリックし、メッシュ設定を行います。

図3 形状のインポートとスケール変更

 次に、図4に示すように、内部部品よりも多少大きめの立方体を再分割領域として設定します。続けて、図5に示すように、電子機器内表面にメッシュレイヤーを設定します。

図4 再分割設定
図5 レイヤーメッシュ設定

 基本設定から初期条件はこれまでと同様、適当な終了サイクルを設定し(図6)、物性設定で、物性をAirにします(図7)。初期条件は静止状態とするので、流速を(0,0,0)に設定します(図8)。

図6 基本設定
図7 物性設定
図8 初期条件設定

 次に、境界条件を設定します。領域として筐体側面にある開口(例ではinletという名前になっています)は排気ファンを想定しているので、「流速設定」で(2,0,0)とし、筐体外への方向で風速2m/sを設定します。筐体上下に付けた開口(例ではoutletとなってます)は単なる開口とするので、「自然流入出」を設定、その他の壁面には「静止壁」を設定します。

図9 境界条件設定

 計算設定で、パソコンのコア数に合わせた並列数を設定します(図10)。続けて、出力設定では、適当な出力間隔を設定します(図11)。最後に、OpenFOAMのバージョンに合わせたフォーマットを選択し、「エクスポート」をクリックして、解析ファイルを出力します(図12)。

図10 計算設定
図11 出力設定
図12 解析ファイルのエクスポート
OpenFOAMでの計算

 XSimでエクスポートしたzip形式の解析ファイルを右クリック→展開として、ファイルを展開します。展開したフォルダ内で、マウス右クリック→端末を開くを選択し、ターミナルを起動します。Allrunファイルに実行権限を与えます。次いで、./Allrunと入力すると、メッシュ分割と計算が自動で行われます。
 OpenFOAMでの計算手順はこれまでと同じですが、ファイル操作などの詳細が知りたい場合は、いきなりOpenFOAMの第2回、第8回を参照してください。

ParaViewでの結果の可視化

 計算が完了し、ターミナルが入力待ちとなったら、paraFoamと入力し、ParaViewを起動します。解析結果が読み込まれた状態で起動するので、propertiesのApply(緑色のアイコン)をクリックすると、解析結果が表示されます。Wireframeを選択し、メッシュを表示すると、図13のように部品周りのメッシュが細分化されていることがわかります。

図13 メッシュ図

 図14は流線を表示したものです。図を見ると、奥側の開口部からの流れは、左側のヒートシンクに相当する部品内を通過して手前の開口部から流出していることがわかります。

図14 流線表示

 

 図15は、流線を静圧コンター表示したものです。手前の開口部では、-6Pa程度の静圧となっていることがわかります。手前の開口寸法は縦横120mmで流速規定2m/sとしたので、1.7m3/minで6Paの圧力損失となり、この点を通過する2次曲線が装置の圧力損失特性になります。装置の圧力損失特性とファン特性との交点が、この装置にファンを組合せた場合の流量となります。
 なお、今回は開口部を単純化しているため、圧力損失は小さめになっています。実際の設計では、格子やスリットでの圧力損失を考慮する必要があります。

図15 流線表示(静圧コンターで色分け)

 これで今回の電子機器内部の流れ解析は終了です。実務では発熱や放熱、開口部のフィンやフィルターなどの効果も考慮しなくてはなりません。それらの設定については別の機会に紹介したいと思います。
 今回、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回、第4回および第8回を参考にしてみてください。

 次回は車体周りの流れの解析を行い、抗力係数を求めてみます。

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