いきなりOpenFOAM (15)

車体周りの流れと抗力係数

解析モデル

 今回は、図1に示す数値風洞をモデリングし、OpenFOAMで車体周りの流れを解析し、抗力係数を求めてみます。流れは図左上の側面から流入し、図右下の側面から出ていきます。なお、車体は左右対称形状のため、1/2分割モデルで解析することで、解析時間を短縮します。

図1 解析モデル
FreeCADによる解析モデル作成

 下記サイトの図面をもとに、車体をモデリングします。
https://www.simscale.com/docs/content/validation/AhmedBody/AhmedBody.html
FreeCADを起動し、PartDesignで横から見た輪郭を作図します(図2)。

図2 横から見た輪郭を作図

 次に、輪郭線を押し出しでソリッド化し(図3)、前面の稜線にフィレット加工を行います(図4)。

図3 輪郭線を押し出してソリッド化
図4 前面の角をフィレット加工

 脚部を作成し(図5)、本体と脚部とを合成します(図6)。

図5 脚部を作成
図6 本体と脚部を合成

 風洞の1/2モデルに相当する立方体を作成し(図7)、風洞部分から車体を切り抜くと解析モデルができあがります(図8)。

図7 風洞モデルを作成
図8 風洞モデルから車体部を切り抜き

 最後に、解析モデルを面要素に分解し、流入部、流出部、車体表面とその他の面ごとにstlファイルを出力します(図9)。

図9 面要素に分割
XSimでの条件設定

 次に、ブラウザを起動し、XSimのサイトに接続します。プロジェクト名を入力し、「作成」をクリックした後、図10に示すように、FreeCADから出力されたstlファイルをドラッグドロップでインポートし、スケールを変更します。

図10 形状のインポートとスケール変更

 次に、車体回りに図11に示すように再分割領域を設定します。続けて、図12に示すように車体表面にレイヤーメッシュを設定します。

図11 車体周りに再分割領域を設定
図12 車体表面にレイヤーメッシュを設定

 基本設定では、適当な終了サイクル例えば500と入力します(図13)。物性設定では、ノート形状のアイコンをクリックし、Airを選択します(図14)。

図13 基本設定
図14 物性設定

 初期条件は、流入側流速と同じ11m/sを設定します(図15)。

図15 初期条件設定

 境界条件は流入側を流速規定で11m/s(図16)、流出側は自然流入流出(図17)、車体表面は静止壁を設定します(図18)。

図16 流入側境界条件設定
図17 流出側境界条件設定
図18 車体表面の境界条件設定

 計算設定で、並列数を設定します(図19)。出力設定で、出力間隔を設定し(図20)、あわせて、抗力係数を設定します。図21に示すように、抗力の方向は流れ方向に、代表長さは車体長さ、代表速度は流入流速に、代表面積は流れに鉛直な車体断面積を入力します。

図19 計算設定
図20 出力設定
図21 抗力係数の設定
図22 解析ファイルをエクスポート
OpenFOAMでの計算

 XSimでエクスポートしたzip形式の解析ファイルを右クリック→展開として、ファイルを展開します。展開したフォルダ内で、マウス右クリック→端末を開くを選択し、ターミナルを起動します。Allrunファイルに実行権限を与えます。次いで、./Allrunと入力すると、メッシュ分割と計算が自動で行われます。
 OpenFOAMでの計算手順はこれまでと同じですが、ファイル操作などの詳細が知りたい場合は、いきなりOpenFOAMの第2回、第8回を参照してください。

ParaViewでの結果の可視化

 計算が完了し、ターミナルが入力待ちとなったら、paraFoamと入力し、ParaViewを起動します。解析結果が読み込まれた状態で起動するので、propertiesのApply(緑色のアイコン)をクリックすると、解析結果が表示されます。
 図23は、流線表示で流速をカラー表示しています。図を見ると、車体後方で渦が発生していることがわかります。

図23 断面流線表示(流速コンター)

 同じく、図24は流線を静圧コンターで表示した図で、図を見ると、車体前方は流れが衝突することにより、静圧が上昇していることがわかります。さらに、車体後方の静圧は大気圧よりも低くなっていることがわかります。つまり、車体は全面への流れの衝突による圧力の他に、車体後方の負圧により流れ方向に流れ方向への力が発生し、これが抗力となります。

図24 断面流線表示(静圧コンター)

 抗力係数は、postProcessingディレクトリ→forceCoeffsディレクトリ→0ディレクトリ→forceCoeffs.datファイル内のCd列の最終行の値が求める抗力係数で、今回の計算では抗力係数は 0.46という結果が得られました。
車体への抗力D[N]は抗力係数Cdと流速u[m/s]、車体投影面積S[m2]とにより下記の式で求められます。

ここで、ρは空気密度[kg/m3]で、車体投影面積は流れに対して鉛直な面に車体を投影した際の面積です。

 これで今回の車体周りの流れ解析は終了です。
 今回、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回、第4回および第8回を参考にしてみてください。

 次回は翼周りの流れの解析を行い、揚力係数と抗力係数を求めてみます。

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