いきなりOpenFOAM (21)
ジューコフスキー翼周りの解析(CFD解析)
解析モデル
前回(第20回)は、ジューコフスキー翼周りの流線をポテンシャル流れ解析で求めてみました。今回はOpenFOAMでCFD解析をしてみます。
まずCADで解析モデルを作成します。ジューコフスキー翼の座標を取り出し、CADで立体化し、風洞部分から削除することで、図1に示すモデルを作成します。ジューコフスキー翼の条件は前回計算と同じでxc=-0.1、yc=0.1、a=10度です。今回は翼弦長が150mmとなるようにジューコフスキー翼の座標を拡大しています。この際、ジューコフスキー翼は後端が非常に薄くなるため、適当な丸みを翼端に設けます。次に、解析モデルを流入口、流出口、翼表面、その他に分けて、stlファイルとして出力します。詳細は、第16回を参考にしてみてください。
XSimでの形状作成と条件設定
XSimを起動し、形状のインポートを行い、スケールを㎜からmに変更します。メッシュ設定では図2に示すように、翼周りに半径150mmの再分割領域を設けます。また、翼面にレイヤーメッシュを設定します。
基本設定は定常解析、k-ε乱流モデル、物性値は空気を選択し、境界条件は図3に示すように、流入口はx軸方向に5m/s、流出口は自然流入出、翼面は静止壁に設定します。
出力設定では図4に示すように、揚力係数と抗力係数とを出力するように設定します。揚力係数・抗力係数の出力設定については、第16回を参照してください。
その他の項目は、これまでと同様の手順にて作成し、エクスポートで解析ファイルを出力し、XSimでの作業は終了です。
ParaViewでの結果の可視化
計算が完了し、ターミナルが入力待ちとなったら、paraFoamと入力し、ParaViewを起動します。解析結果が読み込まれた状態で起動するので、propertiesのApply(緑色のアイコン)をクリックすると、解析結果が表示されます。
図5は流線を表示させたものです。翼後端で翼上面を通過する流れと下面を通過する流れとが合流していることがわかります。流線の表示方法については、第4回を参照してください。
図6は流速分布です。翼上面で流速が増加し、一方、翼下面では流速は低下していることがわかります。また、翼後端から流速の低い領域が延びています。これは後流と呼ばれています。
図7は静圧分布です。翼上面では負圧に、一方、翼下面では正圧となっていることがわかります。この圧力差により翼に揚力が発生します。
揚力係数と抗力係数の計算結果は、解析結果のpostProcessingフォルダ内のforceCoeefs.datに書き込まれています。表計算ソフトで開いて、最終行を見たものが図8です。図でC列が抗力係数Cd、D列が揚力係数Clです。図を見ると、揚力係数Clは1.21と、ポテンシャル流れ解析で得られた揚力係数(Cl=3.4)よりも小さな値となっています。一方、抗力係数はCd=0.09となります。揚力係数は抗力係数の約10倍で、この翼を前進させるために要する力の10倍の重さを持ち上げられることがわかります。
最後に翼の周囲に循環が発生しているのかを確認してみます。ParaViewで、電卓マークのCalculatorアイコンをクリックして、計算欄に、U-iH*5と入力して、流速ベクトルUから周囲流速を差し引いた相対流速を登録します。iHはx軸方向の単位ベクトルです(ちなみにjHがy軸方向、kHがz軸方向の単位ベクトルです)。Glyphで登録した相対流速ベクトルを表示すると、図9に示すように、翼周囲で流れが循環していることがわかります。
ポテンシャル流れ解析では、翼の揚力係数は形状や迎角以外では変化しませんが、実際の翼では揚力係数は、レイノルズ数によっても変化します。
2回に渡りジューコフスキー翼周りの流れをポテンシャル流およびOpenFOAMで計算してきました。次回もこのジューコフスキー翼をモデルに、レイノルズ数の揚力係数への影響をOpenFOAMを使って調べてみます。
今回、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回、第4回および第8回を参考にしてみてください。
おことわり
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