いきなりOpenFOAM (28)

ダクト内ガス拡散解析

解析モデル

 XSimとTutorialケースとを組み合わせて、ダクト内を通過する空気中に、ガスが流入した場合の濃度分布を解析してみます。今回のモデルは図1に示すような縦横100mmの角ダクトにΦ10mmの流入口からガスが流入するものとします。空気は角ダクト左奥から右手前に1m/sの流速で流れ、ガスは流入口から0.1m/sで流入します。

図1 モデル外観
XSimでの設定

 モデルをstlファイルで出力し、XSimにインポートします。図2に示すように、流入口付近に再分割領域を設定します。境界条件は図3に示すように、角ダクト流入口inlet1は1m/s、ガス流入口inlet2は0.1m/sに、また、吐出し口は自然流入出、その他の面は静止壁に設定します。レイヤーメッシュ、基本設定、物性、初期条件、計算設定などは、いきなりOpenFOAM第7回第12回を参考にしてください。

図2 再分割領域設定
図3 境界条件設定
OpenFOAMでの計算

 XSimでエクスポートしたzip形式の解析ファイルを右クリック→展開として、ファイルを展開します。展開したフォルダ内で、マウス右クリック→端末を開くを選択し、ターミナルを起動します。Allrunファイルに実行権限を与えます。次いで、./Allrunと入力すると、メッシュ分割と計算が自動で行われます。
 OpenFOAMでの計算手順はこれまでと同じですが、ファイル操作などの詳細については、いきなりOpenFOAM第2回第8回を参照してください。

 解析が完了したら、正しく解析できているかParaViewを起動し、結果を確認してみます。図4はダクト縦断面の流速分布です。特におかしな点はなさそうなので拡散解析に移ります。なお、実際の解析作業では、この段階で収束状況やy+などのチェックを行います。

図4 流速分布
Tutorialを利用したファイル修正と計算実行

 拡散の計算では、scalarTransportFoamのTutorialケースを適当な名前にして任意の箇所に、コピー・ペーストします。図5にフォルダ全体を示します。

図5 フォルダ全体

 0フォルダを開いて、青い丸で囲まれたUファイルを先ほどの流れ解析で得られた最終サイクル内のUファイルで上書きします。次に、赤い丸で囲まれたTファイルをエディタで開き、XSimで設定した領域に領域名を変更し、Tの値を設定します。

図6 0フォルダ内
図7 Tファイルを修正

 続いて、constantフォルダを開きます。図8の青い丸で囲まれたpolyMeshフォルダを先ほどの流れ解析のconstantフォルダ内のpolyMeshフォルダで上書きします。なお、blockMeshを実行していないTutorialケースでは、polyMeshフォルダはできていないため、単にコピー・ペーストします。次に、赤い丸で囲まれたtransportPropertiesファイルをエディタで開き、図9に示すように拡散係数を追加設定します。

図8 constantフォルダ内
図9 transportProperties ファイルを修正

 次に、systemフォルダを開くと、図10に示すように、4つのファイルがあります。この内、blockMeshDictファイルはメッシュ生成用であり、すでにpolyMeshフォルダをコピー・ペーストしてあるため削除してもかまいません。fvSchemesとfvSolutionファイルはそのままにしておきます。controlDictファイルをエディタで開いて、適当な終了サイクル、時間刻み、出力タイミングを設定します。図11のように設定すると、10秒後まで、1秒ごとに結果が出力されます。

図10 system フォルダ内
図11 controlDict ファイルを修正

 最後に図5のフォルダ位置まで戻って、ターミナルからscalarTransportFoamと入力すると、計算が始まります。計算が完了したら、paraFoamと入力し結果を可視化します。ParaViewの操作については、いきなりOpenFOAM第3回第4回を参考にしてください。

ParaViewでの結果の可視化

 図12は10秒後のダクト縦断面のガス濃度分布です。図を見ると、流入口から侵入したガスが流れに乗って、下流に拡散する様子がわかります。図13は、拡散係数を0とした場合の計算結果です。図13は流れの影響による拡散で、濃度差をもとに拡散する分を考慮に入れると、図12に示す結果となります。拡散係数の大きさにもよりますが、図12と図13を比較すると、流れの影響による拡散の度合いは大きく、汚染物質の拡散などを検討する際には、流れの解析が不可欠となることがお分かりいただけるかと思います。

図12 10秒後の濃度分布
図13 10秒後の濃度分布(拡散係数0)

 今回は拡散解析の具体例として、ダクト内のガス拡散解析を行いました。次回はガスバーナーの解析を行ってみます。

 このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回第4回および第8回を参考にしてみてください。

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