いきなりOpenFOAM (49)

逆さにした瓶からの液体の流出

解析モデルとメッシュ作成

 逆さにした瓶から流出する液体と流入する空気とが出口部分で交差し脈動を起こす現象は、日常でも経験することです。今回は、この現象をOpenFOAMで解析してみます。モデル形状・寸法を図1に示します。いきなりOpenFOAM第42回のモデルを上下逆にして、出口に円筒を設けます。この際、円筒の上部が領域atmosphereとなりますが、領域atmosphereが瓶の出口に直接つながらないように、段差を設ける必要があります(領域atmosphereと瓶の出口がつながると、出口から出た流体がatmosphereに流出してしまうため)。
モデルを面に分割し、図2の赤色の面はside、黄色の面はatmosphere、その他の面はwallsとして、stlファイルを出力します。

図1 解析モデル形状・寸法
図2 領域

 ブラウザでXSimに接続し、インポートとスケール変更を行います。メッシュ設定では、図3に示すように、目標ベースメッシュ数をデフォルト設定より2桁ほど多く設定します。また、領域wallsにはデフォルト設定で境界層を設けます。エクスポートで解析ファイルを出力、展開した後、端末へのコマンド./Allrun –mでメッシュを生成します。

図3 メッシュの設定
ファイルの修正

 解析ファイルは前回の液滴の落下用のファイルセットを用います。コピーを作成し、計算結果や0フォルダ内のalpha.waterファイル、constantフォルダ内のpolyMeshフォルダを削除しておきます。 ./Allrun –mで出力されたconstantフォルダ内のpolyMeshフォルダを先ほどの解析用ファイルのconstantフォルダ内に移動します。領域名を変更しない場合は、setFieldsDictファイルとcontrolDictファイル以外は、そのまま流用できます。
 systemフォルダ内のsetFieldsDictファイルとcontrolDictファイルを図4、図5に示すように修正します。setFieldsDictファイルでは、boxToCellを用いて、瓶内の適当な高さに液体を設定します。この際、boxToCellの下限が領域atmosphereよりも上になるようにしてください。setFieldsDictファイル設定の詳細については、いきなりOpenFOAM第45回を参照してください。
 controlDictファイルでは、解析終了時間や計算結果の出力間隔などを設定します。時間刻みは、時間刻みの自動設定が働くため、前回の液滴落下の解析の設定を流用しても問題ないかもしれません。controlDictファイル設定については、いきなりOpenFOAM第36回を参照してください。

図4 setFieldsDictファイルの設定
図5 controlDictファイルの設定

 ファイルを修正・上書き保存したら、端末で、setFields、interFoamの順にコマンドを入力すると、計算が始まります。

結果の可視化

 計算が終了したら、paraFoamと入力し、ParaViewを起動して結果を可視化します。ParaViewの使い方や液面の表示については、いきなりOpenFOAM第34回を参照してください。
 図6と図7にそれぞれ、流出開始から1秒後と2秒後の液面形状を示します。また、図8は液面の変化の動画です。図および動画から、瓶の出口から流入した空気は、瓶の本体とつながり広がる部分で気泡が分断されることがわかります。そのため、液体の流出に脈動が発生するものと考えられます。

図6 液面形状(1秒後)
図7 液面形状(2秒後)
図8 液面形状の変化(アニメーション)

 液面形状をSTLファイルとして取り出し、CG画像を作成した例を図9に示します。図では液面のみで液体と瓶との接触面がないため、不自然な表現となっていますが、比較的容易にCG画像が得られます。

図9 液面のSTLデータから作成したCG画像
瓶を回転させる

 瓶を回転させると、内部の液体が滑らかに流出することはよく知られています。先ほどの解析ファイルを修正して、回転する瓶からの液体の流出を解析してみます。
 先ほどの解析ファイルをコピーして、計算結果を削除します。次に、Uファイルのwalls部分を図10に示すように修正します。以上の設定で、領域wallsは上から見て、時計回りに毎秒10回転で回転します。領域wallsには床面も含まれるため、流出した液体は床面でも回転してしまいますが、今回は無視することにします。(床面を別の領域名で登録しておけば、瓶だけを回転できます)

図10 Uファイルに壁面回転効果を設定
図11 瓶を回転させた場合の液面形状(2秒後)
図12 瓶を回転させた場合の液面形状の変化(アニメーション)

 次回は、タンクからの液体流出を解析してみます。あわせて、この現象に関連したトリチェリの定理についても説明します。

 このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回第4回および第8回を参考にしてみてください。

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