いきなりOpenFOAM (7)

バックステップ流れを計算する(前編)

形状作成から条件設定まで

 今回からいよいよ任意形状の作成から計算までを行います。最初の例はバックステップ流れで、前編ではFreeCADを使った形状作成から、XSimでの条件設定までを手順を追って紹介します。

FreeCADでの形状作成

 今回は図1のようなモデルを作成します。

図1 モデル形状および寸法

 FreeCADを起動します。今回は大きな直方体から小さな直方体を削るブーリアン演算によりモデルを作成します。まず、図2の赤い丸で囲ったワークベンチでPartを選択します。

図2 FreeCADを起動

 図3に示す赤い丸で囲まれたアイコンをクリックして直方体を作成します。直方体の寸法は青い□で囲まれた数値で変更します。また、直方体の位置は緑の○で囲まれた「…」をクリックして表示されるウィンドウで数値を変更します。同様にして、ステップ部分の直方体を図4に示すようにして作成します。

図3 直方体を作成
図4 ステップ部の直方体を作成

 左側のModel欄で2つの直方体を選択し、図5に示す赤い○で囲まれたアイコンをクリックして、ブーリアン差分を行います。

図5 ブーリアン演算により切り抜き

 OpenFOAMでは境界条件ごとの面要素を用いるため、ソリッド要素をサーフェス要素に分解します。後の形状変更などに対応しやすいように、分解用にはソリッドモデルをコピーペーストしたものを使うと便利です。そこで、図6に示すように、Model欄でソリッドモデルを右クリック→コピーと貼り付けを行い、ソリッドモデルを複製します。

図6 ソリッドモデルをコピー

 次に、図7に示す赤い丸で囲まれたワークベンチをDraftに変更し、青い○で囲まれたアイコンをクリックすると、図8に示すように、モデルがサーフェス要素に分解されます。

図7 DraftモードでSimpleObject(下矢印)をクリック
図8 面要素に分解

 最後に、それぞれのサーフェス要素を境界条件ごとにstlファイルとして保存します。この際、間違えないように、サーフェス要素の名称を変更しておくと便利です。Model欄で要素を選択し、右クリック→「名前の変更」あるいはF2キーで名称を変更できます。Model欄で境界条件ごとに要素を選択し、メニューバーでファイル→エクスポートとして、拡張子はstlを選択して保存します。
 今回の例では、Face001~003をfaceに、step1~3をstepという1つのファイルにまとめて、inletとoutletを加えた4つのstlファイルを出力しています。

面要素の名称変更

 これで、FreeCADによる形状作成が完了しました。

XSimでの条件設定

 ブラウザを起動し、XSim(https://xsim.work)に接続します。図10に示すように、任意のプロジェクト名を入力し、「作成」をクリックします。

図10 プロジェクト名を入力

 次に、図11に示すように、ファイルドロップタブを選択し、FreeCADで保存したstlファイルをCtrlキーで複数選択し、「ここにファイルをドロップ」と記載された箇所にドラッグ&ドロップします。右側のウィンドウにモデルが表示されます。モデルの表示は、マウス左ドラッグ(左ボタンを押しながらマウス移動)で回転、ホイールドラッグで移動、ホイールの回転で拡大・縮小できます。

図11 形状のインポート

 インポート後、FreeCADはmm単位で、OpenFOAMはm単位のため、単位を合わせるためにスケールを変更します。図12に示すように、形状の編集タブを選択し、パラメーターでmm⇨mを選択し、拡大縮小中心は原点を選択します。「適用」をクリックするとモデルのスケールが変わるため、一時的に右側のウィンドウではモデルが見えなくなります。右側のウィンドウの下にある赤い丸で囲まれたアイコンをクリックすると再度表示されます。また、左隣りの青い○で囲まれたアイコンをクリックするとモデル寸法が表示されます。

図12 スケールの変更

 体積メッシュ設定は、モデルを囲む直方体領域を分割する設定です。実際のメッシュはモデル内部にできあがりますが、XSimでは、図13の赤い○で囲まれた「計算領域」を囲む空間をモデルと認識します。計算領域はデフォルトで直方体中心が設定されますが、モデルが偏った位置にある場合は、数値入力欄をマウスでクリックして表示されるウィンドウで座標を修正してください。

図13 体積メッシュの設定

 次に、再分割設定を行います。CFD解析では必要な部分(変化が大きい部分)のメッシュを細分化することが一般的です。ここでは、図14に示すように、ステップ部に直方体の再分割領域を設け、再分割レベルを2に設定します。「追加」をクリックで、再分割条件が設定されます。

図14 再分割設定

 続いてレイヤーメッシュの設定を行います。乱流モデルが標準k-εモデルの場合は、第1層の厚みを無次元距離y+が30から100となるように設定します。詳細は省略しますが、無次元距離y+と流速、動粘性係数から、第1層の厚みを計算できます。第1層の厚みは、体積メッシュで設定したメッシュ寸法と厚み比率との積となります。しかしながら、そもそも流れの様子がわからない状態で求めることは無理があるので、ここは、デフォルトのままで設定します。必要に応じて、出力設定でy+を出力させた結果を基に、設定を見直します。

図15 レイヤーメッシュ設定

 基本設定は、定常計算で、終了サイクルを1000、乱流モデルとしてデフォルトの標準k-εモデルに設定します(図16)。

図16 基本設定

 物性設定では、図17に示す赤い丸で囲まれたアイコンをクリックし、表示されるウィンドウでAirを選択します。

図17 物性設定

 初期状態は図18に示すように、静止状態(流速0)を設定します。

図18 初期条件設定

 流れ境界条件は、図19に示すように、領域として流入口に相当するstlファイル名(ここではinlet)を選択し、流速指定でX軸方向に10m/sを設定します。流出口は同様に領域outlet選択し、自然流入出を設定します。(図20) 自然流入出は静圧0の設定と同じですが、速度勾配も許容している点が異なります。

図19 流入口境界条件設定
図20 流出口境界条件設定

 壁の条件も流れ境界条件で設定します。図21に示すように、内面(stepの領域)に静止壁面を設定します。

図21 内面境界条件設定

 次に計算設定を行います。並列数はパソコンのコア数まで設定できますが、余裕を持たせて、並列数を3に設定しています。その他はデフォルトのままです(図22)。

図22 計算設定

 次の出力設定、今回は出力間隔を100サイクルにします。その他はデフォルトのままです(図23)。

図23 出力設定

 最後に、インストールしているOpenFOAMと同じバージョンのフォーマットを選択し、「エクスポート」をクリックすると、ファイルブラウザが表示され、保存したい箇所を選択してOKをクリックすると、解析ファイルがzipファイルとして保存されます(図24)。

図24 ファイルのエクスポート

 これで、XSimの操作は完了ですが、OpenFOAMでの計算完了まではブラウザは開いたままにしておいたほうが間違った場合の修正が容易になります。なお、会員登録して、ログインすると設定内容をクラウド上に保存できます。

 次回後編はエクスポートしたファイルを使ってOpenFOAMで計算、結果の可視化を行います

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