いきなりOpenFOAM (72)
シーリングファンの解析(その2)
解析モデル
前回はMRF機能を用いて、シーリングファンの流れ解析を行いましたが、ファンの翼形状は平板を傾けただけのものでした。翼の断面形状については、単なる円弧形状であっても、特性改善効果が期待できます。そこで、今回は、翼断面を図1に示す円弧形状とした場合の流れを解析してみます。なお、翼断面形状以外の翼弦長、翼長さや回転速度などは前回と同じです。
翼断面を円弧形状としたシーリングファンを作成し、前回作成した解析モデルとファン部分のみ入れ替え、同様に各面をstlファイルに出力します。詳細は、前回のいきなりOpenFOAM第71回を参照してください。
メッシュ作成と条件設定
ブラウザでXSimサイトに接続し、出力したstlファイルをインポートし、前回と同様にして、解析ファイルを作成します。条件やその設定方法については、前回のいきなりOpenFOAM第71回を参照してください。
また、解析ファイル内のファン部分のstlファイルを差し替えて、新たにメッシュを生成してもかまいません。具体的には、XSimサイトに接続し、ファン部分のstlファイルをインポートし、スケールの変更を行い、エクスポートします。出力された解析ファイルのconstantフォルダにあるtriSurfaceフォルダ内のstlファイルを、前回の解析ファイルのtriSurfaceフォルダに移動(コピー)します。その状態から、端末で./Allrun –mでメッシュ生成のみ行わせます。これで、新しいファン形状でのメッシュができあがります。
計算の実行
前回と同様の手順であれば、保存した解析ファイルを展開し、端末からコマンド./Allrunでメッシュ生成から計算を自動で行えますが、すでにメッシュ生成を終えている場合は、simpleFoamと入力することで、新たなファン形状の計算が行われます。
結果の可視化
計算が終了したら、paraFoamと入力すると、結果を可視化できます。
図3と図4は縦断面での流速分布を示したもので、図3が平板翼での流速分布を、図4が円弧翼での流速分布を示しています。平板翼では中心に下向きに大きな流速が見られますが、周囲の流速は小さくなっています。これに対して、円弧翼では、中心から周囲に広がる流れも見られます。つまり、円弧翼では、室内の空気をより効率的に撹拌できることがわかります。
図5と図6は、風速1m/sの等値面を示したもので、図5が平板翼での等値面を、図6が円弧翼での等値面を示しています。縦断面での流速分布からも予測された通り、円弧翼のほうが、風速1m/sの等値面の範囲が広がり、より効率的に室内の空気を撹拌できることがわかります。また、風速1m/sの等値面は翼の位置に相当した3つの広がりが見られます(翼からの絶対流れは水平に対して傾くため、翼の位置からずれた箇所になります)。この3つの広がりが翼の回転にあわせて回転するため、シーリングファンの下にいる人は、回転速度の3倍の周期(今回は2r/s×3=6Hz)で、風の揺らぎを感じることになります。
ParaViewの表示も視認性に優れていますが、等値面をstlファイルとして保存して、CGソフトで加工すると、よりリアリティのある画像が得られます。図7と図8は等値面をCGソフトで読み込んで、表面物性を煙として表現したものです。
このように、翼断面形状を変更して、XSimとOpenFOAMとの組み合わせで、比較的容易に室内の流れを解析でき、より効率的な撹拌が可能な翼形状の探索が可能です。なお、今回は行いませんでしたが、円筒断面での流速を表示したり、翼周りの相対流れを表示させたりすると、翼断面形状と流れとの関係をより良く理解できます。また、今回は、解析空間を比較的小さな円筒空間としましたが、本来は全圧0という境界条件を満足できるように、十分に大きな空間とする必要があります。
そして全圧0の開口部を設けずに、密閉した室内全体を解析空間とする場合は、圧力規定点を設定する必要があります。圧力規定点は、sytemフォルダ内のfvSolutionファイルのSIMPLEに圧力参照点pRefPointと静圧pRefValueを設定します。具体的な設定方法は、いきなりOpenFOAM第56回「揺れるフラスコ内の液体」で説明していますので、そちらをを参照してください。
次回は、シーリングファンと同様、室内の空気撹拌を目的とした、サーキュレータファンの解析を行ってみます。
このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回、第4回および第8回を参考にしてみてください。
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