いきなりOpenFOAM (75)
サーキュレータファンの流れ解析(その3)
縦断面流速の比較
前回までで、サーキュレータファンにおいて、気流を遠方まで届けるには、動翼の他にダクトと静翼とが必要になることがわかりました。今回は、ダクトと静翼の働きをParaViewの可視化結果から見てみます。
始めに、縦断面の流速分布を見てみます。図1は動翼のみの、図2は動翼とダクトの、図3は動翼とダクトと静翼の縦断面流速分布です。
図1の動翼のみの縦断面流速分布を見ると、動翼後方の流れは、周囲からの流れを巻き込みながら、外側に広がることがわかります。つまり、流れが広がることと、周囲からの流れを巻き込むことで流速が低下し、後方の流速は急速に低下していることがわかります。扇風機の流れがこれに相当し、周囲からの流れを巻き込むことで、扇風機付近では大きな流れを生み出しますが、その範囲は1.5m程度と、気流は遠方までには届きません。
一方、図2の動翼とダクトとの組み合わせでは、周囲からの流れはダクトにより遮蔽されることで、ダクトから出た流れは、図1ほど極端に広がらずに進むことがわかります。さらに、図3の動翼とダクトと静翼の組み合わせでは、ダクトから出た流れは、中心線に向かって流れることがわかります。つまり、中心線に向かって収束するような流れとなっています。このことから、動翼とダクトと静翼との組み合わせでは、前回表示した、風速1m/sの等値面が後方に伸びて、気流を遠くまで届けられたものと考えられます。
静翼位置断面流速
流れが広がる原因について、静翼位置での断面流速分布から見てみます。図4は動翼のみでの静翼に相当する位置での断面流速分布です。図を見ると、流れは動翼の回転方向に旋回すると同時に周囲に広がることがわかります。これは、流れが旋回することにより遠心力が働き、流れを外周方向に広げるためと考えられます。
図5は動翼とダクトとの組み合わせで静翼に相当する位置での断面流速分布ですが、図を見ると、ダクトにより流れが外周に広がることが抑えられています。ただし、旋回成分があるため、動翼後方の流れは流速の低下とともに旋回成分による遠心力で徐々に広がるものと考えられます。
一方、図6に示す動翼とダクトと静翼との組み合わせでの断面流速分布を見ると、旋回した流れは静翼に衝突すると、静翼に沿って、中心方向に流れを変えることがわかります。このことから、流れの旋回による遠心力による広がりを、静翼に沿った中心に向かう流れが抑えることで、後方の流れは、広がらずにより遠方まで流速を維持するものと考えられます。
これまでの結果から、風速一定の等値面の大きさや、断面の風速分布を比較することで、サーキュレータファンの設計に役立てられることがお分かりいただけたかと思います。
次回から、ドローン用のプロペラ周りの流れをOpenFOAMで解析してみます。
このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回、第4回および第8回を参考にしてみてください。
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