いきなりOpenFOAM (78)

ドローンのプロペラ周りの流れ(その3)

物体に働く力とモーメントの出力

 プロペラの推進力と必要なトルクを求めるには、プロペラに作用する力とモーメントとを得る必要があります。OpenFOAMには、物体に働く力とモーメントを出力する関数が用意されています。今回は、プロペラに作用する力とモーメントを出力させる方法と、出力結果について説明します。
物体に作用する力とモーメントを出力する方法は、ユーザーガイドの下記に記載されています。
 OpenFOAM: User Guide: Forces

 ポイントとなる部分を要約すると、図1に示す内容が記載されたファイルを用意し、controlDictファイルのfunctionsで呼び出すと、図2に示すような書式で、圧力(図中Pressure)による力とモーメントおよび、と粘性(Viscous)による力とモーメントが出力されます。Porousは多孔質体に関連したもので、今回の解析では関係ありません。

図1 記載例
図2 出力例
forcesファイルの作成と出力結果

 ユーザーガイドの説明を基にforcesファイルの作成とcontrolDictファイルの修正とを行ってもかまいませんが、チュートリアルケース内のファイルを利用すると容易です。具体的には、FOAM_TUTORIALS/incompressible/pimpleFoam/propellerのsystemフォルダ内のforcesファイルを利用します。
 始めに、systemフォルダ内のcontrolDictファイルのfunctionsに図3に示すように、#include “forces”;を追加します。これは、systemフォルダ内のforcesファイルで計算を行わせるという指示です。

図3 controlDictファイル

 次に、前述のチュートリアルケースのsytemフォルダ内のforcesファイルをsytemフォルダにコピーペーストします。その後、forcesファイルをエディタで開いて、図4に示す赤い枠の箇所を修正します。patchesは、力とモーメントを出力させたい領域で、今回はプロペラ表面を表すstlファイルの名称です。CoefRは回転中心の座標、pitchAxisは回転軸を表す単位ベクトルで、今回はZ軸を中心に回転させているため、(0 0 1)となります。なお、pitchAxisはベクトルなので、仮に回転中心が原点ではないとしても、Z軸が中心であれば、(0 0 1)となります。

図4 forcesファイル

 以上のファイルの追加と修正を行い、端末からコマンドsimpleFoamで計算を行わせると、postProcessingフォルダ内に、forces.datというファイルが出力されます。forces.datファイルは図5に示すように、計算サイクル毎に、圧力による力、粘性による力、多孔質体の影響がx,y,z成分ごとに、また圧力によるモーメント、粘性によるモーメント、多孔質体の影響が同様にx,y,z軸周りごとに表示されます。このうち、多孔質体の影響は今回の解析では関係ないのと、粘性によるものはわずかであるため、3サイクル目では図中青い枠で囲まれた値がプロペラの回転軸方向に働く力を、また、図中赤い枠で囲まれた値がプロペラの回転軸周りのモーメントを示します。単位は、力はNで、モーメントはN・mです。 
 最終サイクルでは定常状態に達しているとして、500サイクルでの値を読み取ると、推進力は3.15N、回転に必要なトルクは0.13 N・mと求まります。トルクと角速度との積から軸動力が求まり、今回は100r/sであるため、軸動力は約82Wとなります。つまり、出力が82Wのモーターで約300gの物体を空中に浮遊できることがわかります。

図5 プロペラに作用する力

 今回はプロペラの性能評価を行うための、推力やトルクの算出方法を説明しました。
 ところで、ドローン用のプロペラは翼数が2枚、3枚、4枚など様々なタイプが市販されています。そこで、次回は、翼数が推進力とトルクに及ぼす影響について調べてみます。

 このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回第4回および第8回を参考にしてみてください。

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