いきなりOpenFOAM (79)
ドローンのプロペラ周りの流れ(その4)
翼数が異なるプロペラの準備と計算
市販のドローン用プロペラには、翼数が2枚や3枚など各種のものがあります。今回は、翼数の異なるモデルをOpenFOAMで解析し、翼数が推進力とトルクに及ぼす影響を調べてみます。
図1に示すように、翼数が2枚、3枚、4枚のプロペラを作成し、それぞれをstlファイルとして出力します。
XSimを用いて、いきなりOpenFOAM第77回と同様に各形状の解析ファイルを作成してもかまいませんが、今回は、プロペラ形状のみが異なるので、プロペラを囲む再分割領域と回転領域については、それぞれ翼数に関わらず共通した位置と形状となります。
そこで、XSimでは、プロペラ形状のstlファイルのスケール変更とエクスポートを行い、スケール変更されたstlファイルを取り出し、利用することにします。具体的には、スケール変更後にエクスポートを行うと、出力された解析ファイル内にconstantというフォルダがあり、その中のtriSurfaceフォルダ内にスケールが変更されたstlファイルが入っています。このスケール変更後のstlファイルで、以前、いきなりOpenFOAM第77回で作成した解析ファイルの同じ位置(constant/triSurfaceフォルダ)にあるプロペラ形状のstlファイルを上書き保存します。
後は、いきなりOpenFOAM第77回と同じ要領で、./Allrun –mでメッシュ生成、simpleFoamで計算を行います。詳細は、いきなりOpenFOAM第77回および第78回を参照してください。
推進力とトルクの計算結果
計算結果から求められた推進力とトルクとを表1に示します。表1から、翼枚数の増加とともに推進力とトルクとが増加することがわかります。つまり、翼数が多いほど大きな推進力が得られる反面、必要な軸動力も大きいことがわかります。一方、翼数と推進力とは比例しないこともわかります。
推進力[N] | トルク[Nm] | |
2枚翼 | 3.15 | 0.13 |
3枚翼 | 4.21 | 0.19 |
4枚翼 | 5.19 | 0.24 |
表1から、翼数と推進力とをプロットした結果が図2です。図2で一点鎖線は、2枚翼の推進力から求めた翼1枚当たりの推進力と翼数との積です。図3は、同様にして、翼数とトルクとをプロットしたもので、一点鎖線は同じく、翼1枚当たりのトルクと翼数との積です。図2を見ると、翼数の増加に伴い、翼1枚当たりの推進力が低下していることがわかります。一方、図3から、翼数の増加に伴い、翼1枚当たりのトルクも低下していますが、推進力ほど顕著ではありません。以上から、翼数の増加に伴い、推進効率が低下することがわかります。
翼周りの相対速度の表示
なぜ、翼数の増加に伴い1枚当たりの推進力が低下するのかを、翼周りの相対流速から見てみます。
相対流速は流速ベクトルから回転によって生じるベクトルを差し引くことで求められます。図4に示すように、Calculater1で相対流速を変数RUとして登録し、Calculater2で円筒面を定義します。次に、Contour1で円筒面を表示させ、SurfaceVectors1で円筒面に投影された相対流速RUを求め、Glyph1で相対流速をベクトル表示させます。詳細は、いきなりOpenFOAM第70回を参照してください。
上記の方法で表示した翼周りの相対流速を図5から図7に示します。それぞれ、図5は2枚翼の、図6は3枚翼の、図7は4枚翼の翼周りの相対流速を示しています。
図の翼先端付近の相対流速を見ると、図5に示す2枚翼での相対流速ベクトルは翼先端付近では、水平となっている(赤丸部分)のに対して、図6、図7に示す3枚翼、4枚翼での翼先端付近での相対流速ベクトルは下向きに傾斜していることがわかります。これは翼先端付近の流れから見ると、翼の傾きが低下したことになります。つまり、迎角の低下を意味し、そのため、揚力が低下し、翼1枚当たりの推進力が低下したと考えられます。翼先端付近の流れは、上流側の翼を通過した流れの影響を受け、翼枚数が多いほど、上流側の翼を通過した流れの影響を強く受けるため、翼先端付近の流れの向きが変わり、翼の迎角が低下したと考えられます。トルクについても、迎角が小さくなると抗力も小さくなるため、翼枚数の増加とともに、翼1枚当たりのトルクが低下したものと考えられます。
今回はプロペラの翼数の異なるプロペラの解析を行い、推進力やトルクの違いと、その原因を翼周りの相対流速分布から説明しました。
次回は、翼の断面形状による違いを、円弧翼と平板翼で推進力とトルクを求め比較してみます。
このページでは、各アプリケーションの操作説明は省略しています。FreeCADの具体的な操作については、いきなりOpenFOAM第5回および第7回、OpenFOAMでの計算実行は第8回、ParaViewの操作については第3回、第4回および第8回を参考にしてみてください。
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