扇風機を利用した換気促進方法
新型コロナウイルスやインフルエンザなど、ウイルスによる感染拡大を予防する方法として、換気が推奨されています。前回は学校教室を対象として、どのような窓開け方法が有効なのかを検証しましたが、今回は住宅のリビングを対象に1か所しか窓が開けられない場合に、扇風機を利用して換気を促進する方法を、コンピュータシミュレーションを使って検証します。
(前回の記事はこちら)
表1 計算条件一覧
室内発熱 | 200W(大人2名+家電機器) |
屋外風および外気温度 | 無風、22℃ |
扇風機の位置 | 窓から30cm室内側 |
扇風機の高さ | 80cm または 40cm |
扇風機の羽根径 | 30cm |
扇風機の風速 | 3m/s(中~強運転) または 1m/s(微~弱運転) |
扇風機の運転状況 | 首振りなし、水平吹出し |
表2 扇風機の設置と設定パターン
ケース名 | 送風の方向 | 高さ | 風速 |
ケース0 | 扇風機なし | 扇風機なし | 扇風機なし |
ケース1 | 室内 | 高(80cm) | 強(3m/s) |
ケース2 | 屋外 | 高(80cm) | 強(3m/s) |
ケース3 | 室内 | 低(40cm) | 強(3m/s) |
ケース4 | 室内 | 低(40cm) | 弱(1m/s) |
室内全体の空気齢平均値で比較すると47.5倍もの差が生じる衝撃的な結果になりました。この結果から扇風機を利用することで換気を大幅に促進させることができると言えます。ちなみにケース0の空気齢113,146 [秒]は31時間半ですので、無風時に1か所の窓を開けただけでは、ほとんど換気ができないことを意味します。
椅子やソファーに座った時の顔の高さに相当する床上1mと室内全体の空気齢の平均値は、2~3%の違いと、扇風機の向きによって大きな違いは無いようです。ただし、室内の最大値は扇風機を室内に向けたほうが良い値となっています。扇風機を通過する空気がどこから来て、どこへ行くかを線で表示した下図を見ると、扇風機を室内に向けた場合は、奥まった部分まで風が到達しているのに対し、扇風機を屋外に向けた場合は、そこまで影響が及んでいないことが分かります。結果的に奥まった部分の空気齢の違いが室内の最大値の差に表れています。部屋の隅々まで換気を促進させるためには、扇風機を室内に向けるのが良いですが、扇風機の風で物が飛んでしまうなどの問題があるようでしたら、屋外に向けてもほぼ同様の効果が得られると考えていいでしょう。
ケース1 ケース2
劇的な違いは無いものの、低い位置に設置したほうが、室内の平均値で7~8%換気が促進され、室内の最大値では12%ほど促進の効果が表れました。扇風機の位置で空気齢の分布を見てみると、高い位置のケース1では、外に向かう空気齢が大きい空気を少し巻き込んでしまっているように見えます。一方、低い位置のケース3では、新鮮な空気を示す濃い緑の部分が奥まった部分にまで到達していることが分かります。
ケース1 ケース3
強運転がケース3、弱運転がケース4の空気齢の結果です。これからはっきりと風速が遅くなると換気の効果が極端に小さくなるということが分かります。空気齢の平均値は2.6倍から2.7倍悪くなり、最大値は4倍近い値になります。これはたまたまかもしれませんが、風速を1/3にしたら、空気齢(淀んでいる時間)が約3倍になりました。
室内の分布を見ても、外気を室内に送り込むことはできているものの、風が弱いために部屋の奥まで届かず、結果的に部屋の空気が滞留してしまっています。
ケース3 ケース4
おことわり
今回の検討はある一定の条件下でのシミュレーション結果になります。異なる条件では違った結果や傾向になる場合があります。また、このシミュレーション結果は実現象の再現を保証するものではありません