夏場の換気は短時間で済ませたい
新型コロナウイルスやインフルエンザなど、ウイルスによる感染拡大を予防する方法として、換気が推奨されています。前回は春先の中間期(春および夏のエアコンを使わない時期)を想定し、扇風機が換気促進に効果があるかを調べました。 (前回の記事はこちら)
今回は夏場を想定し、同じく窓を1面しか開放できない場合に、レンジフードやサーキュレーターを使って、できるだけ短時間で換気できる方法を探ってみます。
表1 計算条件一覧
換気前の室内温度 | 27℃ |
屋外風および外気温度 | 無風、33℃ |
レンジフードの風量 | 毎時600立法メートル(強運転) |
サーキュレーターの高さ | 中心が床から15cm |
サーキュレーターの羽根径 | 15cm |
サーキュレーターの風速 | 3m/s(中~強運転)、屋外に向けて送風 |
窓の開放幅 | 95cm(全開)または10cm |
表2 検討ケース一覧
ケース名 | レンジフード | サーキュレーター | 窓開放幅 |
ケース1 | 停止 | なし | 全開(95cm) |
ケース2 | 運転 | なし | 全開(95cm) |
ケース3 | 運転 | なし | 10cm |
ケース4 | 停止 | あり | 全開(95cm) |
●ケース1
ケース1はレンジフードもサーキュレーターも使わず、ただ窓を開けただけの場合です。
窓を開けた直後は窓上部から外気が勢いよく流入し、換気がされはじめますが、すぐに変化が少なくなり、10分後も部屋の下半分はほとんど換気されていない状態で残っています。部屋の下側に残るのは、元々室内の空気が27℃と外気と比べて低いのと、バルコニーの手すりがコンクリートでできており、空気が抜けない仕様になっているためです。
●ケース2
次は、レンジフードを強運転して窓を全開にしたケースです。レンジフードは玄関ドアが開かなくなるほど強力で、強運転は1時間あたり600立法メートルの空気を排気できます。これは、今回の部屋では換気回数10回に相当するので、素早い換気が期待できます。
ただ窓を開けただけのケース1よりは換気が促進されていますが、このケースでも床付近に換気されない汚い空気が溜まってしまっています。
レンジフードは強力でしたが、どうやら窓の上から入ってきた外気が、そのまま部屋の上のほうを抜けてレンジフードに吸い込まれているようです。つまり、途中からはレンジフードがきれいな空気を一所懸命排気しているという状態になってしまいました。
●ケース3
ケース2が少々企画倒れだったので、ケース3では窓の開放幅を絞って(10cmにして)、開いている部分全体から外気が入ってくるようにしました。
この場合は、床付近も外気が入ってくることで、汚い空気が溜まることなく、部屋全体を素早く換気できていることが分かります。
●ケース4
最後のケースは前回もありましたが、扇風機やサーキュレーターで室内の空気を排出する方法です。今回はサーキュレーターを窓の前に置き、外向きに送風したケースになります。
夏場の換気で部屋の下のほうに汚い空気が溜まるという問題をこのサーキュレーターが解決しています。部屋の隅に少し汚い空気が残りますが、部屋全体としてはレンジフードを使うよりも素早く換気ができています。
今回はサーキュレーターにしましたが、扇風機でも同じ効果が得られると考えられます。
ここで注目するのは、累計換気量が60立法メートルのところです。この60立法メートルは検討した部屋の換気回数1回に相当します。つまり、この換気回数1回を得るために必要な窓開け時間がここから分かり、どの方法が一番素早く換気できるかが分かります。
表3 換気回数1回のために必要な窓開け時間
ケース名 | 換気回数1回のための窓開け時間 |
ケース1 | 18分30秒 推定値 |
ケース2 | 4分40秒 |
ケース3 | 6分00秒 |
ケース4 | 5分08秒 |
このように、室内に入ってきた外気の量だけに着目すると、ケース2が最も速く換気でき、ケース1はその約4倍の時間がかかる結果となりました。
そして、これらの時間は換気回数1回分ですので、推奨される換気回数2回にするためには、1時間に2回窓開けをする必要があります。ケース2からケース4は5分前後を1時間あたり2回行うことで実現できそうですが、ケース1の場合は、1時間で37分開けておかないと、換気回数が2回になりません。
例えば5分後(300秒後)に着目すると、ケース4の残留量が一番少なく34%程度である一方、上記の外気流入量の視点では一番効率が良いと思われたケース2は50%弱残っている結果となっています。
つまり元々室内にあった空気を排気するという観点ではケース4のサーキュレーターを使う方法が一番迅速かつ効果的な方法であると言えます。
今回の検討ではエアコンは運転していませんが、実際の部屋では換気中もエアコンを付けっぱなしにし、できるだけ短い時間で換気する(効率の良い換気方法を選ぶ)ことが換気と快適の両立につながるのではないでしょうか。
おことわり
今回の検討はある一定の条件下でのシミュレーション結果になります。異なる条件では違った結果や傾向になる場合があります。また、このシミュレーション結果は実現象の再現を保証するものではありません